リゴレット あらすじ
舞台は、16世紀イタリア北部のマントヴァ。
第一幕
■マントヴァ公爵の宮殿では今日も豪華な舞踏会が開かれていて、着飾った大勢の騎士や貴婦人達の笑い声や音楽で賑わっている。美しい貴婦人たちを見ながら、公爵はバッラータを歌う。
【公爵のバッラータの大意】
女性の美しさは天からの贈り物だ!今日も恋を楽しもう!

■舞踏会はまだ途中なのに帰ろうとするチェプラーノ伯爵に従うチェプラーノ伯爵夫人を公爵が引き止める。
【公爵&チェプラーノ伯爵の二重唱の大意】
チェプラーノ伯爵夫人 夫が帰ると申しますので残念ですがこれにて失礼致します。
公爵 私は貴女に恋しています。貴女のように美しい女性はこの宮殿で太陽のごとく輝いていてください!

■公爵に引き止められたチェプラーノ伯爵夫人は、公爵にエスコートされて別室に消えていく。

■恋を楽しんだものの、まだまだ物足りない公爵に、リゴレットは伯爵夫人をさらってしまうようそそのかす。
リゴレットはマントヴァ公爵お気に入りの道化師で、公爵の権力をかさに皆に毒舌をふるい、反感を買っていた。
【公爵&リゴレットの二重唱の大意】
リゴレット チェプラーノ伯爵夫人をさらってしまえばいいじゃないですか。
公爵 お前は悪ふざけが過ぎるぞ! いつか、お前の毒舌がいつか災いをもたらさねばよいが。

■そこに、チェプラーノ伯爵夫人の父親のモンテローネ伯爵が現れ、公爵に娘を騙した謝罪を求めるが、それを全く相手にしない公爵と、モンテローネ伯爵を馬鹿にするリゴレットの2人に対して激怒し、呪いの言葉を投げかける。
【モンテローネ伯爵&リゴレット&公爵の三重唱の大意】
モンテローネ伯爵 娘に謝罪を願います…さもなくば命に代えても復讐しますぞ!父親の悲しみを知るがいい!
リゴレット 頭のいかれたボケじいさん!言いがかりはやめなさいよ。
公爵 黙れと言うのが分からぬのか!・・・何と無礼な!牢につないでしまえ!

■モンテローネ伯爵は兵士に捉えられたが、リゴレットはモンテローネ伯爵の呪いの言葉が気になって仕方がない。帰宅途中で、リゴレットは一人、己の人生を嘆き、モンテローネ伯爵の呪いを恐れてアリアを歌う。
【リゴレットのアリアの大意】
殺し屋は刃物で人を殺し、俺は言葉で人を傷つける。同じ人種だ。俺がせむしでさえなければ!天は何て不公平なのだ!俺が嫌われるのは、みんな世の中が悪いのだ!…でもなぜか不安だ、不幸が襲ってこなければいいが。

■リゴレットは気を取り直し帰宅する。リゴレットは、たった一人の愛娘を世の中から守るため、隠れて暮らしていた。ここでは、皮肉屋のリゴレットも愛情深き父親だ。一方、世間知らずなジルダは、教会で出会った学生が変装した恋多き公爵とは知らずに、恋心を抱くようになっていた。
【リゴレット&ジルダの二重唱〜ジョバンナとのやりとりの大意】
ジルダ 家族のことや、お父様のことを教えてください。それに、この場所に来てから3ヶ月、どこにも出かけていないので街を見に行きたいのです。
リゴレット お前の母親は、醜いわしを愛してくれたたった一人の女性だが、お前が生まれてすぐに死んでしまった。大切な娘ジルダよ、教会以外には行ってはいけないよ。ジョバンナ、この大切な宝を守ってくれ。
ジョバンナ 大丈夫です。誰もこの家には近づけていません。鍵もきちんとかけています。

■ところが、ジョバンナは学生に変装した公爵から口止め料として内緒でお金を渡され、公爵を家に入れてしまう。リゴレットが宮殿に戻り、二人が話し始めると、不意に公爵が突然現れ、ジルダに愛を告白する。
【ジルダ&ジョバンナの二重唱の大意】
ジルダ 教会で見かけた学生のことをお父様に言い出しそびれてしまったわ。
ジョバンナ お嫌いですか?良い青年ではないですか?身分も高そうですよ。

【ジルダ&公爵の二重唱の大意】
公爵 僕は一目であなたに恋をしてしまった。どうか、一生、僕を愛して欲しい。僕の名はグアルティエール・マルデ、貧しい学生です。
ジルダ (ジョバンナ、どうしよう・・・)私も貴方を愛しています。愛し続けます・・・ああ、誰かが来てしまったみたいです。誰にも見られないうちにお帰りになってください。

■公爵が慌てて立ち去ると、ジルダは一人、公爵への想いを歌う。
【ジルダのアリアの大意】
グアルティエール・マルデ!慕わしいお名!私は最期の吐息までも、貴方のものです。

■その夜、ジルダをリゴレットの愛人だと勘違いした公爵の家来達は、「チェプラーノ伯爵夫人をさらうのだ」とリゴレットを騙し、リゴレットの日頃の悪態への仕返しに、ジルダを宮殿へさらってしまう。

第二幕
■宮殿にて。公爵は、ジルダが何者かにさらわれたことを知り、苛立っている。そして、ジルダへの想いを歌う。
【公爵のアリアの大意】
誰があの天使をさらったのだ?幸せにすると約束したのに、最愛の女性の涙が見えるようだ。

■しかし、ジルダをさらったのは家来達で、宮殿にいることを知った公爵は大喜びでジルダの元に向かう。
遅れて、公爵の宮殿にジルダを探しに来たリゴレットは「最愛の娘を返してくれ」と泣きながら家来に懇願する。
【リゴレットのアリアの大意】
卑劣な廷臣達よ、最愛の娘を返してくれ。あの娘はこの老いぼれの全てなのです。我が子を守るためならば、何も恐れるものはない。娘さえ返してくれれば、旦那達には何もしない。どうか、どうか娘を返してくれ。

■そこに、ジルダが部屋から飛び出して来る。
【ジルダのアリア〜リゴレットとジルダの二重唱の大意】
ジルダ 公爵に恋したのですが、昨晩不意に連れてこられて辱しめを受けたのです。
リゴレット なんてことだ、不幸はわしにだけ訪れるよう願ったのに。思う存分泣くがいい。

■嘆く二人の前をモンテローネ伯爵が牢に移送されていく。リゴレットは伯爵に自分を重ね合わせ復讐を誓う。
【モンテローネ伯爵の独白~リゴレットとジルダの二重唱の大意】
モンテローネ伯爵 憎き公爵め!わしにこれほど呪われてもばちが当たらぬとは! 
リゴレット 貴公の復讐は叶いますぞ!凄まじい稲妻のごとく、わしが復讐してやる!復讐だ!
ジルダ 裏切られても、まだ私はあの方が好きなのです。どうか、許して差し上げて下さい。そうしたら、私達にも天からのお赦しが届くことでしょう。どうかお父様、お慈悲をお願い致します。

第三幕
■ミンチョ川河畔の夕暮れ。公爵への恋心が断ち切れぬジルダに、リゴレットは公爵の本性を見せようと古びた居酒屋の外から中をのぞかせる。
リゴレット お前はまだあの男が恋しいのか・・・それならば、この中を見るがいい。
ジルダ あの方が恋しいです。あの方も私を大切に想って下さっています。

■居酒屋の中では、今度は若い将校に変装した公爵が、マッダレーナを口説いている。
【公爵のアリアの大意】
女は気まぐれ。OKと言ったと思ったらNO! NOと言ってもOK! それを楽しむのが恋の醍醐味さ!

【四重唱の大意】
公爵 前に会ったことがあったよね?あれ以来、かわいい君が忘れられない。結婚しようよ。
ジョバンナ 何言ってるんだい?酔っ払いの言うことなんか信じないよ。でも、結婚の約束は欲しいわ。
ジルダ なんてひどい裏切り!私にもこんな風に恋を語ったわ・・・
リゴレット これでもまだ、お前は公爵を信じるのか?

■リゴレットは、ジルダを一足先にヴェローナに無理やり旅立たせ、殺し屋に公爵の殺害を依頼する。そうとは知らない酩酊状態の公爵は、居酒屋で眠ってしまう。
その夜は嵐。殺し屋の妹マッダレーナは公爵に恋してしまい、公爵を助けたいが、殺し屋の仕事は断れない。「誰でもいいから身代わりが必要だ!」という言葉を、壁穴から聞いてしまったジルダは・・・・・

■殺しの報酬として残りの金貨を払ったリゴレットは、公爵の死体を足元に勝利を叫ぶ。
リゴレット 卑しい俺の足元に公爵様!復讐は叶った!早く水の中へ投げ込んじまおう! 

そこに、死んだはずの公爵の歌声が聞こえてくる。公爵の死体だと思っていたのは・・・。


♪【リゴレットとジルダの二重唱】
リゴレット 死んではならぬ!わしを独りにしないでくれ・・・・・・・!
ジルダ 不幸な娘をお許しください。お母様と一緒にお父様のためだけにお祈りいたします・・・

・・・あの呪いだ・・・


登場人物とキャスト紹介

■リゴレット(バリトン) ◇演ずるのは 南澤 創
マントヴァ公爵お気に入りのせむしの道化。背中と同じに性格が歪んでいるが、生涯でたったひとりだけ愛してくれた亡き妻の忘れ形見、最愛の娘ジルダを大切に思うあまり、世間から隠して育てる純粋な一面もある。モンテローネ伯爵の呪いを受ける。

■ジルダ(ソプラノ) ◇演ずるのは 黒羽 律子
純真無垢で、世間知らずな16歳の娘。父親であるリゴレットに大切に育てられ、父親を名前も知らぬまま慈しみ、教会以外は外出すら禁じられている。初めて恋した公爵を想うあまりに・・・・・。

■マントヴァ公爵(テノール) ◇演ずるのは 丸山 和明
権力者である一方、女性と見れば誰かれ構わず口説いており、女性からも好かれる色男。たまたま教会で見かけたジルダを恋するようになる。モンテローネ伯爵から、リゴレットと共に呪いを受けるのだが・・・・・。

■チェプラーノ伯爵夫人/ジョバンナ/マッダレーナ(以上メッツォソプラノ) /モンテローネ(バリトン) ◇演ずるのは 関口 輝美 
表の顔は酒場の女だが、実は殺し屋の妹マッダレーナは、下士官に変装した公爵に口説かれ、情に流されて、公爵の代わりに旅人を殺害しようとするが・・・・・。

■ピアニスト&演出 猪野 幸子