今回南沢さんが歌っているのは,イタリアの作曲家ウンベルト・ジョルダーノのオペラ『アンドレア・シェニエ』の中のジェラールのアリア
『Nemico della patria(祖国の敵)』です。
 このオペラのストーリーの背景には,フランス革命があります。南沢さん演じるジェラールも,詩人アンドレアシェニエも,伯爵家に仕えながらも密かに貴族支配の打倒を目指す同志でした。そんな二人は,マッダレーナという伯爵の御令嬢に引かれていました。
 やがて貴族支配は打倒されます。しかし,貧しい庶民には国を治めるだけの経済力がなく,庶民の中から貴族の経済力に頼る人々が出てきました。
 ジェラールは民衆の立場を貫きますが,詩人アンドレアシェニエは貴族の経済力を頼る人々に従います。しかし民衆の力は貴族の経済力を制圧していきます。
 民衆は革命裁判所を開設し,貴族側に傾いた人々を裁いていきます。南沢さん演じるジェラールは,革命裁判所でシェニエを裁く側の立場になります。それでも,ジェラールとシェニエは敵味方という構図の中で,それぞれマッダレーナを愛し続けています。
 最終的にシェニエは死刑に処せられてしまうのですが,マッダレーナはシェニエを慕い,シェニエとともに処刑されます。
 南沢さんが歌っているアリアは,革命裁判所でジェラールがシェニエについての資料を見ている場面から始まります。
 ジェラールは資料に書かれている内容を読みながら,シェニエが裏切り者であることを確信し,資料を床に落とします。そしてラストで,敵には勝ったが愛には勝つことができなかった複雑な思いを歌い上げます。
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解説=ドラネコ