私は本当は,今の段階では農薬と化学肥料を使って家庭菜園をしてみたいと思っています。また,脱サラをして農業にたずさわる人はまず,農薬と化学肥料を使った農業から始めるのがよいとも思っています。
 理由は簡単です。農薬と化学肥料を使った農法は,かなり研究され,技術的に確立されている部分が大きいからです。裏を返せば失敗の可能性がかなり低減されます。
 また,無農薬有機農法に比べて栽培の労力をはるかに低く抑えることができます。更に作物の実力を最大限に引き出しやすく,その分成功体験の可能性が高まります。
 農業を生業として生きていくためには,第一条件として市場で売れる作物を作ることが必要不可欠です。いくら体によい作物を作っても,市場価値が限りなく低ければ,生計を成り立たせるには至りません。ですから新しく農業を生業としようとする人はまず,農薬と化学肥料を使った栽培から始めるべきなのです。そして暮らしが安定したところで,徐々に環境への負荷を下げる試みをすればよいと思うのです。
 このような順序を追えば,3年で農業を離れる人が減るのではないでしょうか。
 話を私自身に戻します。今年,久しぶりに本腰を入れて家庭菜園に取り組みましたが,とにかく病害虫とナメクジと雑菌に追い立てられました。
 今年はナスが大豊作でしたが,収穫した実の大部分にアザミウマが針を刺した痕が残っています。ピーマンの多くに穴が開き,中からナメクジやらアオムシやらが出て来ました。キューリの葉っぱの多くは雑菌感染を起こし,そのような葉っぱに触れる度に付け根からハサミで切り落としています。厳密に言えば市場に卸せるものはほとんどできていません。これが本職の農家だったら完全に生計は成り立ちません。でもこれは農薬を適切に使用すればクリアできる問題です。
 ですが私は目が見えません。即ち農薬を取り扱うにはかなり難しい状況にあります。農薬はまず,正確に決められた倍率に薄めて使用します。
「原液を1000倍に希釈して散布します」
と書いてあったら,きっちり1000倍に薄めて使わなければなりません。これが液肥だったら多少の誤差は特段問題にはなりません。でも農薬は別です。希釈倍率を間違えたり,決められた散布頻度をきちんと守れなかったりすれば,食の安全が脅かされるばかりか,環境にも取り返しのつかない影響を与えてしまうことにもなりかねません。ですから私は,農薬を使いたくても使うことはしません。
 同様に安全上の理由から,小中学生のみなさんには,できるだけ農薬を使わないことをお奨めします。ただし,化学肥料は最初のうちは植物の成長と肥料を構成する一つ一つの成分との関係性をきちんと理解するために,使ってみた方がよいと思います。
 化学肥料は成分が細かく明確に記されています。また,植え付けから収穫初期,そして収穫終了時期に至るまでのいくつかのステージにおいて,構成する成分の比率を加味しつつ,何種類かの肥料を使い分けていく必要があります。
 例えば葉や茎が育つのには,窒素(N)が多く必要です。それに対し,着果にはリン(P)が多く必要です。根を育てるにはカリウム(K)が必要となってきます。
 それぞれの成長段階に合った成分の肥料を与えると,効果が覿面に現れます。そのことを体験することで,植物と対話できるようになっていきます。言い換えればどのタイミングでどの栄養素を与えればよいか,植物の様子を見て判断できるようになります。
 その判断力が十分についてきたところで,徐々に有機栽培に移行することで,ようやく無農薬有機農法で市場に出荷できるレベルの農作物を栽培できるようになると,私は考えます。そして私もまた,その道の途中を手探りで歩いている段階です。
 歩きながらさまざまな疑問や研究のネタを見つけては,答えを求めて試行錯誤し,今はそれが楽しくて仕方ありません。ということで是非,私が自分で確かめられない疑問やら研究のネタやらは,是非みなさんで研究していただけたらと願うわけです。そして,
「こうしたらうまくいった!!」
というノウハウをみんなで共有できたらいいだろうなあと思っています。是非,私の疑問に前向きに取り組んでみていただけますと幸いです。

ドラネコ

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